ていましたので」
「御商売は?」
「JOAKの技術部に勤めてます」
「JOAK! アノ放送局の技師ですか」大江山警部の顔面筋肉《がんめんきんにく》がピクリと動いた。
「そうです、どうかしましたか」
「『ラジオの日本』という雑誌を御存知ですか」
「無論知っています」
「貴方のお名前は光吉《ひかりきち》ですか」
「光吉《こうきち》です」
「大磯に別荘をお持ちですかな」
「いいえ」
「だれかに恨《うら》みをうけていらっしゃいませんか」
「いいえ、ちっとも」
「邸内に悪漢が忍び入ったような形跡《けいせき》はなかったですか」
「一向にききません」
大江山警部は、さっぱり当りのない愚問《ぐもん》に、自《みずか》ら嫌気《いやけ》がさして、鳥渡《ちょっと》押し黙った。
「省線電車の殺人犯人は、まだ見当がつかないのですか」と反対に笹木光吉が口を切った。
「まだつきません」と警部は、ウッカリ返事をしてしまった。
「銃丸《たま》は車内で射ったものですか、それとも車外から射ちこんだものなんですか」
「……」警部はむずかしい顔をしただけだった。
「銃丸を身体の中へ打ちこんだ角度が判ると、どの方角から発射したか
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