た。「だが、この記事が、なにになるというんだ」
 なにか省線電車射撃事件に関係があるようでいて、さァそれはどういう関係だと聞かれると、説明ができなかった。ただ漠然《ばくぜん》たる一致が感じられるばかりだった。警部は、それを、自分の科学知識不足に帰《き》して、ちょっと忌々《いまいま》しく感じたのだった。それにしても、一体誰がこの雑誌を送ってよこしたのだ。
 また扉《ドア》を叩くものがあった。部下の多田刑事であることは開けてみるまでもないことだった。応《おう》と答えると、果して多田刑事が入ってきた。彼の喜びに輝いている顔色はなにごとかを発見してきたのに違いない。
「課長! とうとう面白いものを見付けてきました。これです」多田は、そう云って、小さい紙包を、大江山警部の前に置いた。
 警部は、それを手にとって開いてみると、二個の薬莢《やっきょう》だった。
「ほほう、これはどこにあった」
「現場附近の笹木邸《ささきてい》の塀《へい》の下です」
「待て待て、これが弾丸《だんがん》に合うかどうか」と警部はやおら立って傍《かたわ》らの硝子函《ガラスばこ》から弾丸をつまみ出すと薬莢に合わせてみた。果然《
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