意を喚起《かんき》するのに充分だった。
「無線と雑音の研究」を思いたったHS生は、東海道線大磯駅から程とおからぬ山手に住んでいる人だった。彼の家にはラジオ受信機があったが、ラジオを聴いていると、それが聴きとれないほどのガリガリッという大きな雑音が、一日にうちに数十回入ってくるのだった。彼はラジオに雑音の起る時刻を測ってみたところ、それは毎日きまった時刻にガリガリッと鳴ることを発見した。それから、探求《たんきゅう》を進めてゆくと、雑音の原因は、家の前を通る列車の電気機関車が、架空線《かくうせん》に接触するところで、小さい火花を生ずるためで、殊《こと》に大きい雑音は、架空線の継《つ》ぎ目《め》のところで起ることが判った。その結果、受信機で雑音を数えながら、時計をみていると、列車が毎時幾キロメートルの速度《スピード》で走っているか、又列車はどの地点を走っているかが、家の中に居ながらして、手にとるように判るというのである。HS生は、大磯附近の地図や雑音の大きさを示す曲線図を沢山|挿入《そうにゅう》して、これを説明してあった。
「こりゃ面白い発見だ」と大江山警部は、思わず独言《ひとりごと》を言っ
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