まい。なぜなれば、彼はひどく酔払っていて、どうにもならない。彼の服装は、ぼろぼろ服と別れて、りゅうとした若い海員姿に変っている。よほどたんまり金がはいったと見える。
彼がお稲荷《いなり》さんの境内《けいだい》の木の根元から掘りだした半かけの金属片《きんぞくへん》は、たしかに黄金製であったのだ。彼はそれを、海岸通《かいがんどお》りからちょっと小路にはった[#「はった」はママ]ところにある万国骨董商チャンフー号に売ったのである。主人のチャン老人は、孔子《こうし》のように長い口ひげあごひげをはやして、トマトのように色つやのよい老人であった。老人は、姉川が持ってきたメダルを二万円で買うといった。姉川はそれを聞くと十万円でないといやだといったが、結局三万五千円でチャン老人は買い取った。
大金をつかんで、宇頂天《うちょうてん》になって店をでようとする姉川に、うしろから老商チャンは声をかけた。
「こんなにかけないで、丸々満足なのがあったら四割がたええ値で買いまっせ」
姉川は、ふふんと笑ったまま、店をでていった。
「ふふふふ。まるでただのようなもんや。つぶしても十二万円には売れる。しかし惜しいも
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