した。
月に照らしだされたところでは、彼の顔は無精《ぶしょう》ひげでおおわれ、頭もばさばさ、身体の上にはたくさん着ていたが、ズボンもジャケツも外套《がいとう》もみんなひどいもので、破れ穴は数えられないほど多いし、ほころびたところはそのままで、ぼろが下っていた。外套にはボタンがないと見え、上から縄でバンドのようにしばりつけてあった。放浪者《ほうろうしゃ》であった。
「さっきから見ていりゃ、あの小僧め、へんなまねをしやがったぜ。いったい、あの木の根元に何を埋めたのか、ちょっくら見てやろう。食えるものなら、さっそくごちそうになるぜ」空腹《くうふく》を感じていると見え、そのひげの男は舌なめずりをして、下へ下りてきた。そしてのっそり、崖の上の椋《むく》の木のところまでいった。
彼はすぐ埋めてある場所を発見した。そうでもあろう、春木少年が踏みつけていったすぐあとのことだから、気をつけて探せば、すぐ目にとまる。
「ははあ。この石が目印ってわけか」ひげ面男は石をけとばすと、そこへしゃがみ、両手を使って土をかきだした。間もなく彼は目的物をつかんで立ち上った。
「なあんだ、これは……」彼はあてが外れた
前へ
次へ
全242ページ中69ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング