ある。運動をする場所は床から二階までぶっ通しになっているが、その外にすこしばかり小さい部屋が一階と二階についていた。一階は運動具をおさめる室などがあり、二階は図書記録室の外に、宿直室があった。今はこの宿直室は体操の先生である立花《たちばな》カツミ女史が寝泊りしていた。この先生は、列車に乗って遠方から登校するので、翌日も授業のある日は、ここに泊っていく。
 春木少年は、自分の学校の先生ではないが、立花先生を見おぼえていた。なにしろ女史は目につく婦人だった。背丈《せたけ》が五尺五寸ぐらいある、すんなりと美しい線でかこまれた身体を持っていた。そしてととのった容貌《ようぼう》の持ち主で、ただ先生であるせいか、冷たい感じのする顔であった。春木少年は、東京に住んでいたころ、近所にこの立花先生によく似た婦人があったので、先生の顔はすぐおぼえてしまった。
 立花先生のことを、このへんの子供は、タチメンとよんでいた。それは身体が長い銀色の魚タチウオに似ていて、先生は女だからメスで(この町ではメスのことをメンという)つづけていうとタチウオのメン、つまりタチメンという綽名《あだな》がついたのである。
 春木
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