二百メートルばかりいくと、そこから向こうは急に高く崖《がけ》になっていた。崖の上には稲荷神社《いなりじんじゃ》の祠があった。このごろのこととて屋根はやぶれ軒は傾き、誰も番をしていない祠だった。春木は、その石段をのぼることをわざとさけ、横の方についている草にうずもれた急な小道をのぼっていった。もちろん姿を見られないためだった。
崖の上にのぼりついて、彼はほっとした。ここなら、まず、大丈夫である。
というのは、ここは山の裾《すそ》で、ひどい傾斜《けいしゃ》になっている。稲荷神社のまわりには、古い大きい木がぎっしりとり囲んでいて、枝がはりだして隙間《すきま》のないほどだ。それに境内《けいだい》もごくせまい。ここなら、ヘリコプターが下りてこようとしても、翼《つばさ》が山の木にさわって、とてもうまくいかないであろう。春木は、そういう推理にもとづいて、崖の上のお稲荷さんへかけあがったのである。
おそろしき事件
おそろしい事件が、この時には既《すで》に、あらまし終っていたのだ。
今、その最後の仕上げが行われつつあった。
さて、それはどういう事件であったろうか。
ヘリコプター
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