から逃げていきます」
 ちょうどそのとき四馬剣尺は、屋根をはなれて、春木少年の鼻のさきまできていたが、その声をきくとズドンと一発! 春木少年はあっと叫んで床のうえに身を伏せた。
 しかし、春木少年の叫ぶまでもなく、警部の一行もヘリコプターの爆音に気がついていた。それ、屋上《おくじょう》が怪しいというのでバラバラと屋根のうえへあがってきたが、無念! ひとあしちがいで四馬剣尺は、縄梯子にブラ下ったまま、ゆうゆうとして虚空を逃げていく。
 ズドン、ズドン! 警官たちの手から、いっせいにピストルが火をふいたが、もうこうなれば後《あと》の祭《まつり》だ。四馬剣尺のブラ下ったヘリコプターは、折からの半月の空を、しだいに遠く、小さく、すがたを消した。
 ヘリコプターの爆音が、遠ざかるのを待って、床から這いあがった春木少年、非常梯子《ひじょうばしご》づたいに万国堂の屋根へおりていくと、
「ああ、君か、さっき電話をかけてきたのは……せっかく注意してもらいながら、残念にも悪者はとりにがしたよ」
 と、秋吉警部が歯ぎしりしながらくやしがっている。
「えっ、それじゃ、小男や猫女もにがしたのですか」
「小男や猫
前へ 次へ
全242ページ中212ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング