さかいにな。しかしもうあそこは頼みになりまへん。主人が殺されましたさかい」
「なんという?」
「チャンフーという老主人が、この間ピストルで殺されましてん。まだ犯人はつかまらんちゅう話だす。春木君から、ぼく聞いたんです」
「ばかばかしい。そんなことがあるものか。はははは」
 と、とつぜん戸倉老人が笑いだした。
「なんで、おかしがってんだね」と牛丸が、けげんな顔で聞きかえすと、戸倉老人は、こういった。
「チャンフーが殺されるなんて、絶対にそんなことは有り得ないのじゃ。お前さんたちはだまされている」
 どうしたのであろうか。春木少年は、びっくりして老人の顔をながめやった。戸倉老人は、へんなことをいいだしたものである。それとも、老人の笑うには、なにかしっかりした根拠《こんきょ》があるのであろうか。
 戸倉老人が元気になって、事件はまたもやいっそう怪奇な方向へすべりだした。しかし中天には、明々皎々《めいめいこうこう》たる大満月が隈《くま》なく光をなげていた。

   燃えあがる山塞《さんさい》

 戸倉老人は妙なことをいいだした。
「チャンフーが殺されるなんて絶対にそんなことはあり得ないのじゃ。
前へ 次へ
全242ページ中161ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング