さかいにな。しかしもうあそこは頼みになりまへん。主人が殺されましたさかい」
「なんという?」
「チャンフーという老主人が、この間ピストルで殺されましてん。まだ犯人はつかまらんちゅう話だす。春木君から、ぼく聞いたんです」
「ばかばかしい。そんなことがあるものか。はははは」
と、とつぜん戸倉老人が笑いだした。
「なんで、おかしがってんだね」と牛丸が、けげんな顔で聞きかえすと、戸倉老人は、こういった。
「チャンフーが殺されるなんて、絶対にそんなことは有り得ないのじゃ。お前さんたちはだまされている」
どうしたのであろうか。春木少年は、びっくりして老人の顔をながめやった。戸倉老人は、へんなことをいいだしたものである。それとも、老人の笑うには、なにかしっかりした根拠《こんきょ》があるのであろうか。
戸倉老人が元気になって、事件はまたもやいっそう怪奇な方向へすべりだした。しかし中天には、明々皎々《めいめいこうこう》たる大満月が隈《くま》なく光をなげていた。
燃えあがる山塞《さんさい》
戸倉老人は妙なことをいいだした。
「チャンフーが殺されるなんて絶対にそんなことはあり得ないのじゃ。
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