老人が元気いっぱいだったことである。牢の中でも、首領の前へ呼びだされたときでも、老人は一歩も歩けない重病人《じゅうびょうにん》のように見えた。それは、わざと重病人の風をよそおっていたのにちがいない。
 しかし老人が、いくら巧《たく》みに抜け道から抜け道をたどって逃げたにしろ、わるがしこい四馬剣尺《しばけんじゃく》の張ってある網の目をすべてくぐりぬけることはできないはずだった。だがすばらしい幸運が、老人と二少年とを助け、一度もへまをやらないで山塞の脱出に成功した。その幸運というのは、ちょうどこのとき山塞の中は、机博士事件でごったがえしていて、要所要所の見張りはおろそかになっていたのだ。
 なにしろ、おそろしいでき事だった。
 町まで使いにいって、ちょうど山塞の近くへもどってきた一味《いちみ》の一人が、ふと目をあげたとき、妙なものを見つけた。身体をぐるぐる巻きにされた一人の人間が、崖《がけ》から横にでている電柱のような長い棒の先から吊り下げられ、ぶらんぶらんと揺《ゆ》れているのであった。
「うわッ、あぶねえ」
 その使いの者は、仙場《せんば》の甲二郎《こうじろう》という男であったが、彼はび
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