件《きょうふじけん》であって、とても少年の身では歯がたたないばかりか、大危険《だいきけん》にまきこまれることは分りきっていたのである。
 まあ、前《まえ》おきのことばは、このくらいにしておいて春木少年がその事件の第一ページの上に、どういう工合《ぐあい》にして、足を踏みこんだか、それについて語ろう。
 その日、春木少年は、この間から学校で仲よしになった同級生の牛丸平太郎《うしまるへいたろう》という身体《からだ》の大きな少年といっしょに、日曜を利用した山登りをやっていたのである。その山登りというのは、芝原水源地《しばはらすいげんち》の奥にあるカンヌキ山の頂上まで登ることであった。
 春木少年が、この町へ来たのは、ほんの一カ月ほど前のことであった。その前、彼は東京にいた。この町は関西の港町だ。
 くわしいことは、いずれ後でのべる時があるから、ここには説明しないが、春木少年は、家の事情によって、とつぜんこの港町の伯母《おば》さんの家へあずけられたのであった。そして清は、近くの雪見《ゆきみ》中学校へ転校入学したのだった。彼は三年生だった。
 一時はずいぶんさびしい思いもしたが、清はこの頃ではすっ
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