》として、その後の活動をすることにしたのであるが、実はもう一つ、彼が考えたことがあった。それは、
 ――ヘザ某は、オクタンの放った暗殺者のために殺され、ヘザの持っていた黄金メダルの半ぺらは行方不明となった。オクタンは自分の持っている半ぺらをたよりに、宝探しをこころみたが、うまくいかなかった。そして彼は、残念に思いながら死んでしまった。だから、世界的大宝物は、まだ発見されずにもとのところに保存されている――
 まず、こんな風に推定したのだった。
 だから、オクタンは、とても悪い奴《やつ》。ヘザ某は気の毒な人。そしてヘザ某の遺族か部下は、オクタンを恨《うら》んでいるが、彼らの手には、オクタンには奪われないで助かった黄金メダルの半ぺらがある。扇形《おうぎがた》をしたその半ぺらを持っている者があったら、それはヘザ某の遺族か部下に関係ある者だ――と春木少年は思った。
 このことが正しいかどうか、読者諸君には興味が深いであろう。なぜなれば、諸君は春木少年のまだ知らない事実――四馬剣尺や猫女のことなどを知っているのだから。


   きれいな独房《どくぼう》


 かわいそうなのは、自宅からヘリコプターにさらわれていった牛丸平太郎少年だった。
 彼がヘリコプターに収容せられたときには、気を失っていた。だから、あとのことはよくおぼえていない。
 気がついたときは、固いベッドの上に寝ていた。おどろいて彼は起き直った。からだが方々痛い。
「おお、これは……」
 明かるく照明された、せまい一室だったが、入口は扉《と》のかわりに、鉄の格子《こうし》がはまっていた。牢屋《ろうや》だった。ベッドは部屋の隅にとりつけてあって、腰かけの用もしていた。
「ぼくを、こんなところへいれて、どうするつもりやろ」
 牛丸は、鉄格子のところへいって、それが開くかどうかためしてみた。だめだった。鉄格子の外側には、がんじょうな錠前がぶら下っているのが見えた。
 鉄格子の前は通路になっていた。そして正面には、壁があるだけだった。
 どこか抜けだすところはないかと、牛丸少年は部屋中を見まわした。天井に小さい空気穴があいているだけだ。そこからでようとしても人間にはできないことだった。小さい猫ならでられるかもしれないが、牛丸は猫ではなかった。
 天井は、高かった。室内には、ベッドの外になんにもない。いや、一つあった。それ
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