静粛につき従っていた。
博士は甲冑に取りつけた第一の目盛板を廻した。博士の肩のところの放電間隙にボッと薄赤い火が飛んだ。すると今まで遠方に聞えていたミルキ国の音楽浴のメロディーが、スイッチをひねったようにパタリと停った。
次に博士は第二の目盛板を廻した。博士の後に従っていた人造人間が、無言のまま博士の横をすりぬけて行列正しく表に出ていった。そのうちの二人はペンとバラに代って、この室に居残った。人造人間はそれぞれミルキ国人に代って、枢要なる配置についたのだった。
博士は今や第三の目盛板を廻した。
すると、静かな、そして爽やかなメロディーが流れてきた。
間もなく室内のテレビジョン電話のスクリーンに一人の人造人間の顔がうつった。彼は博士の方を向いて口を開いた。「ミルキ国の法令できめられた音譜は、完全に破壊されました。それに代って、人間讃美の音楽浴が始められました」
博士は静かに肯いた。新しい人間性の讃美の音楽浴! 累々たるミルキ国の屍人たちはその新しい音楽浴を聞いて甦るのであろうか。
しかし冷たくなった死屍は、墓石のように動かなかった。
博士コハクは壮大なる操縦盤の置かれた、
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