指揮室に入って、魂のない五百体の人造人間を見事にあやつっていった。
電気砲はブルルルルと呻りながら、火星のロケット艦めがけて重い砲弾を発射しつづけた。
――人造人間の手によって。
数百台の攻撃ロケット艇が地表から天空真一文字に昇騰していった。地下では砲弾や毒ガス弾や解磁弾が山のように作られていった。皆人造人間の手によって。
そして博士は、心静かに、遠くから響いてくる人間性讃美の音楽浴のメロディーに聞きほれている。
人間性讃美の曲。それは冷たき亡骸になったミルキ国人のために奏せられるのであろうか。それとも博士によって創造された美しき人造人間に人間の魂を移し植えるために奏せられるのであろうか。いやそれは只一人の生残り人間なる専制コハクのために奏せられる挽歌であった。卓越せる頭脳の持主である博士にとっては、累々たるミルキ国の死者を更生させることは大して困難なことではなかった。しかし博士は全然そういう意志を持っていなかった。科学者とは畢竟そういう冷たい者であった。
しかし博士コハクは、ここに彼が日頃理想としたユートピアを堅き信念と大なる自信をもって建設しようとこれつとめているのだっ
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