も第二次第三次の国民戦線が送られた。しかし第十室の出入口はビクともしなかった。
 彼等を激励するために、ミルキ国の音楽がたえず奏せられたけれど、彼等にとって極量を超えた刺戟物は、激励するどころか、いたずらに昏倒を促進させるばかりだった。――そうして、ついに力のあるミルキ国の人間は、ミルキ閣下と女大臣アサリとの二人きりになった。
 女大臣は、それでも進撃の号令をやめようとはしなかった。彼女は物につかれた人のようであった。
 二人はついに部屋を立ちいでて、廊下づたいにアリシア区に進撃していった。二人は始めて音楽浴の洗礼を受けた。二人はそれを快く感じた。しかし進んでゆくほどに、その急ピッチの音楽浴が二人の脳髄を次第々々に蒸していった。嘔吐を催すような不快感がだんだんと高まってきた。ついに二人は、転げこむようにアリシア区の入口を入った。
 鬼哭啾々、死屍累々。二人は慄然としてあたりを見廻した。開かぬ扉は奥のほうに二人を嘲笑するように見えていた。
「行くか」とミルキ閣下が訊いた。
「行きましょう」とアサリ女史が言下にこたえた。
「ではその扉に突進しよう」
「ええ、それでは」
 どんな目的の下に扉
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