シア区に、突然爆撃戦隊が乗りこんできた。まるで泥流のように、疲労し困憊しきったその夥しい戦隊の兵士たちが……。ペンとバラはびっくりして蝙蝠のように壁ぎわにへばりついた。
 戦隊長の号令によって、第十室の扉を破壊する工作が始められた。いつもは一人で間にあう仕事が、今は二十人でも間にあわなかった。酸水素焔焼切り器につかまったまま、意気地なく絶命する者が続出した。ちょっとした労働が、彼らの弱りきった心臓をパタリと停めてしまうのだった。
 女大臣は自室にいて、刻々と伝わってくる報告を取りあげ、ますます不機嫌になっていった。扉の前に死屍は累々として、今は扉を開くどころか死体を持ちだすことさえならなくなったと聞き、女大臣アサリ女史はついに予備隊として待機させてあった索敵戦隊に進撃命令を下した。
 だが、同じような重病患者の寄りあい世帯のような索敵戦隊に何が望めるというのだろう。
 それでも扉はやっと破壊できた。しかしその扉の奥に、また別の扉が厳然と閉っているのを見たとき、索敵戦隊の勇士たちは稲束が風に倒れるように、ヘタヘタと尻餅をついてしまった。
 女大臣は国民戦隊を編成させて出発させた。その後に
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