からは刻々に火星のロケット艦の接近が、か細い声によって報告されてくるのだった。
「どうしたものじゃろう」
とミルキ閣下は最早絶望の色をかくそうともしなかった。戦隊長はこれに続いてスクリーンの中から言った。
「もちろんこの有様では、火星のロケット艦をやすやすとミルキ国に入城させるより外ありません。せめてここに百名の強健な兵士がおれば、国都は一時支えられます。いや百名と揃わなくとも五十名でもなにかの足しになるんですが、今わが戦隊には、ああ!」
これを聞いていた女大臣は、眉をピクリと動かして、なにかの決心が彼女についたように見えた。
「おお最後の一策だ?」とアサリ女史は突然叫んだ。
「最後の一策とは?」
「ええ最後の一策ですわ。それはアリシア区の第十室から奥の扉を打ちやぶって、その中から博士コハクの秘蔵している人造人間を引張りだすのです。そしてそれを戦闘配置につかせるのです」
「ああ人造人間」とミルキ閣下は手を叩いたが、また心配そうな顔つきになって、「果してアリシア区の奥にそんな逞ましい人造人間がいるだろうか。それに、あの扉は固い。それをしいて破ろうとすれば、爆発するという」
「なあにそ
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