に再び前の二人の戦隊長の顔が現われた。二人の顔はわずかこの四、五分の間に、五歳も六歳も年齢をとったかのように消耗[#「消耗」は底本では「消粍」]していた。
 二人の隊長は、兵士を非常召集して、点呼を行ったことを述べ、
「――その結果、兵士の意気はすこぶる軒昂なるも、彼らは一様に健康を害していまして、戦闘に適するものなんかただの一人もありません」
 と、愕くべき報告をもたらした。
 女大臣はそれをにわかに信じなかった。でもいろいろと問いただしてゆくうちに、やはりどの兵士たちも音楽浴にのぼせ上って、そのために発狂せる者、発狂に近い者、わずか一日のうちに体重を二十%減らした者、内臓疾患が爆発的に重くなって斃れた者などが続出した事実を、遺憾ながら信じなければならなくなった。敵をしりぞけ吾れを護る任務のある索敵及び爆撃戦隊が闘わずして全滅の有様であった。ミルキ国はいまや自殺の状態にあった。女大臣の音楽浴二十四回法令は三時間とたたないうちに、恐るべき破綻を生んでしまった。ぬくぬくと肥え太っている者は、音楽浴に漬たる義務のない女大臣アサリ女史とミルキ閣下だけであるらしかった。
 そのうちにも、天文部
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