」
ミルキ閣下は、にがりきった。
11[#「11」は縦中横]
音楽浴が済んだ知らせがあった。そこで女大臣は早速索敵と爆撃との二戦隊長をテレビジョン電話の前に呼びだした。二人はスクリーンの前に顔を現わした。二人は言いあわせたように、大きな眼をギョロギョロと光らせ、頬はゲッソリとこけ、喘息患者のようにヒイヒイと喘いでいた。過去において、かくも憔悴しきった二人の戦隊長を見たことがなかったので、さすがの女大臣もギクリとした。
動員と戦闘準備とが、厳然と申し渡された。二人の戦隊長は、瘠せ衰えた顔に忠誠の色を現わして、謹しんでその命令をお受けした。女大臣アサリ女史は、今までの憂鬱も憤懣もどこへやら忘れて、至極満足の意を表した。
「いかがです閣下。わたしはあの二人の戦隊長があのように感激に震えていたのを、未だかつて見たことがありません」
「そうかネ、わしはもう国民の顔を見るのがいやになった」
「まあ、閣下は神経がお弱いのですね。なあに、あの二人の忠誠な隊長に委せておけば大丈夫ですよ」
それからものの四、五分もたった後のことだった。テレビジョン電話のベルが鳴って、スクリーンの上
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