かと、行って調べてきたんだ」
「それはどうも近頃勇敢なことです。そして閣下のお望みどおり第十室から奥へ入れましたか」
と皮肉るのは大臣アサリだった。
「いや駄目だった」
「駄目だということはすぐおわかりでしたろうのに。それにどうして朝になるまでアリシア区にいらしたのですか」
「ナニどうにかして扉《ドア》を開けたいと思って、頑張っていたんだよ」
「はあ、さようでございますか。どの扉《ドア》を開けようとなすってらしたのかわかったものじゃありませんわ」
アサリ女史は、そばの金の停り木にとまっていた青い鸚鵡の方を向いて、フォークの尖につきさした赤い肉片をさしだした。
飢えた鸚鵡は、それを見るより早く嘴を開いて肉片にとびついた[#「とびついた」は底本では「とびいた」]。だが、間もなく床の上にポトンと肉片の落ちる音がした。飢えたる鸚鵡が、せっかくくわえた肉片を惜しげもなく下に落したのであった。
「あれあれピント」と閣下は鸚鵡の名前を呼んで、「お前はどこか身体の加減でも悪いのだろうか」
するとアサリ女史が、鸚鵡に代ってこたえた。
「いいえ、ピントははちきれるように丈夫ですわ。でも人造人間の肉
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