大臣アサリはお揃いの朝食をとっていた。
 女大臣は寝衣《ねまき》を着ていたのに、ミルキ閣下は外出服をつけていた。
「閣下は昨夜ふけて寝床から抜けてゆかれましたね。おかくしになってもだめよ。一体何処へ行ってらしたのです」
「イヤなにちょっと、その……」
「いくらお隠しになっても駄目ですのよ。わたしの部下が、さっき閣下をアリシア区附近でお見かけしたといっていましたよ」
「アリシア区で見かけたというのかい、このわしを」
 ミルキ閣下は愕きの目をみはった。
「何のご用があって、わざわざ夜更けに寝床から抜けていらしたのですか」
「何の用って、別に――お前は誤解しているようでいけないよ。昨日もアリシア区を調べてわかったではないか」
「なにがわかったとおっしゃるの」
「ソノつまり、つまりソノ何だ。ええ、昨日アリシア区を調べたが第九室までしか見られなかった。第十室以後は、しいて開けようとすると爆発するという騒ぎだ。しかし第十室以後を見ないというのは、ミルキ国において自分の絶対権力が行われないところもあるという面白くない証拠を残すことになる。それははなはだ残念だからどうにかして中に入りこむ手段はないもの
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