、それが各台ともさらに多数の枝線へ変圧配給されているのであった。部屋の一方の壁はこれらの配給線管で毛糸の編物を顕微鏡でのぞいたような光景を呈していた。そしてすべてが深海の底のように無音の状態に置かれてあるのが、さらにこの部屋を恐ろしいものにした。
 第八室に入ると、ここは参考標本室であった。人造人間の博物館ともいうべきところで、紀元前四世紀以来、人知が考え出した人造人間のありとあらゆる模型が陳列されてあった。あやつり人形のようなもの、甲冑武士のようなもの、進んでは電波操縦によるリレー式のもの、それから人造肉をかぶせてだいぶん人体らしくなってきたものなど約七百種のものが陳列されてあった。これらの人造人間の標本は、まるでみいら[#「みいら」に傍点]の殿堂に入ったように、怪しい表情を天井にむけ、永遠に硬化した肩と肩とを組み合わせていた。
 ペンは始めて見る室々の怪奇さに、揉み手をしたり、目を大きく剥いたりして昂奮という態であった。
「第九室です。すこしうるさくなります」
 とバラが案内人のような口調でいった。
 ミルキ閣下は女大臣と目を見合わせて、ちょっと不安な表情をしたが、間もなく二人は胸
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