を張り肘をつっ張って、しいて虚勢を張りながら、第九室に通う戸口の前に立った。
バラは、なんとしたことか、案内すると言って置きながら、扉《ドア》を開くのを妙に躊躇していた。女大臣アサリは早くもそれを見て取って、彼女らしいヒステリーを起した。
「さあ、早く扉《ドア》を開きなさい。ぐずぐずしていると、ためになりませんぞ」
と、アサリ女史はバラを睨みつけた。
それでもバラは、もじもじと尻込みをしながら、はんかち[#「はんかち」に傍点]などを出して、しきりに額の汗を拭うのであった。ペンはそれを見ていると恐ろしくなってきて、戸口から遠くへ身を引いた。
女大臣の顔は、だんだんと赭らんできた。憤怒の血が湧き上ってきたのだった。
「開けないのだネ。開けなきゃ、わたしが開けて入る。しかしお前さんは後で刑罰を覚悟しているんだよ」
女史が扉《ドア》を押そうとしたとき、バラはあわてて前へ飛びだした。
「あっあぶない、待って下さい。扉《ドア》をそのまま開けると爆発しますのよ」
8
爆発! と聞いて女史はブルブルと身ぶるいをした。博士をミルキ夫人の室で虐殺しようとしたときに、思いがけない
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