から轟然たる一大音響が聞えてきた。
「あッ」とミルキ閣下は耳に蓋をしながら、「あの物音は一体何が起ったんだろう」
「閣下、早く行って見ましょう。博士が逃げるために扉《ドア》を破ったのかも知れませんよ」
だが扉《ドア》は、前のようにピタリと閉まっていた。二人は相談した結果、扉を開いてみることにした。そこに番をしていた電気士がすぐに送電したので、扉《ドア》は釦を押すと同時に、また前のようにスルスルと下に落ちた。
二人は室内に躍りこんだ。大爆発が起ったものと見え、あの豪華な装飾も跡はなくなって、じつに目をそむけたいような荒れ方だった。二人は床の上に、バラバラになって飛び散っている男女の腕や脚を見た。それを拾おうとして女大臣が一歩室内に足を入れたとき、ちょうど待っていたかのように、ボーッという音もろとも、床上が一面の火焔でもって蔽われた。勇敢をもってなる女丈夫アサリ女史も、こうなってはもう策の施しようもなく、その場に立ちすくんだ。床上に残っていたバラバラの手足も、すっかり火焔のなかに隠れてしまった。
ミルキ夫人と博士コハクとはかくしてアロアア区の煙と化したものと見られた。しかし爆発の種が
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