れることでしょう。博士、さあこっちを向いて、わたしの眼を見て下さい。わたしの震える唇を見て下さいましな。この世にわたしが魂と肉体とを献げるべき男性は貴下より外にないのです。さあ、どうかわたしを抱きしめて下さい。わたしに命じて下さい。わたしは貴下のためにどんなことでもしますわ。ミルキ一の美人であるわたしが国民の前でたった一言唇を開けば、国民はわたしの言うとおりになります。わたしの真の敬い、そして愛するのは博士コハクである、皆さんは博士に忠誠を誓いなさいといえば、百万人の国民は立ちどころにそうするにちがいありません。さあ、そうしてもっといい国家を樹てましょう。恋愛だとか性欲だとか嗜好だとか人間の欲望を徹底的に進展する新国家を樹てましょうよ。さあわたしを早く抱きしめて下さい」
 ミルキ夫人は爬虫類を思わせるようなしなやかな[#「しなやかな」に傍点]身体をくねらせて椅子から立ち上った。そして博士コハクの膝にその全身を投げかけたのだった。

      5

「まあ、貴下はどうかなすっていらっしゃるのじゃない?」
 と、ミルキ夫人は博士の膝の上で、愕きの声をあげた。
 博士は別になんにもこたえず
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