点に達するでしょう。わたしは国民の一部が、すでにこの毒素の欝積に気づいているものと見ています」
「毒素の欝積があるとしても、毎日十八時の音楽浴がそれを解消しているではありませんか」
「解消したように見えるだけです。一時は本当に解消するのでしょう。しかしそれは完全に解消するのではありません。麻酔はどこまでいっても麻酔です。賢明なる貴下がそれに気がついていないはずはないのです」
「ミルキ夫人よ。私は閣下に忠誠を誓い、そしてご命令によって動いているだけの学者なのでございます」
「お黙りあそばせ。貴下は音楽浴や人造人間を発明する科学者にすぎないと言うのでしょうが、どうしてどうして、貴下は科学者だけなものですか。貴下は科学者であるよりも、数等卓越した政治家なんです。ミルキ閣下などはそばへ寄れないくらいの偉人なんです」
「お言葉が過ぎるようにぞんじます。私は忠誠を誓う一国民にすぎません。ご命令によって忠実に動くことが精々な人間です」
「そんなことがあるものですか。この国をミルキが支配するよりも、貴下が支配するほうがどのくらいいいかしれないのです。貴下が支配者になれば、わたし自身も今の百倍も幸福にな
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