である。あまりに強き政治の裏には、あまりに強き反動がある。ポールの罪だけではないとペンは思った。そしてポールと話しておれば、音楽浴の麻酔がジワジワと融けてくるのをさえ感じた。彼もまたポールと同じく、ミルキ閣下を冒涜する一人であると思った。
「ねえポール。そういえばバラに注意したがいいよ。あの女はお前のことを廃物電池といってさげすんでいたぜ。バラにこの秘密を嗅ぎつかれると大変だ」
「バラはお前の細君じゃないか。お前がしっかりしていりゃ、知れるきづかいはない」
「うんにゃ、バラは男のように鋭い女だ。俺の手にはおえない」
「なんだペン公、亭主のくせに、情ない弱音を吹くな」
「いや亭主はもう廃業しようかと思っている。あんな女に連れ添っていると、世の中がいっそう味気なくならあ」
「へえ、そいつは本気か。別れてしまって、また女房を探すんだろうが、誰かに見当をつけているのかい」
「冗談じゃない。気の合う優しい女なんていないものだな。なあポール。俺はお前が男友達でなくて女友達だったらいいと思うよ」
「ナニ女友達」ポールが口を丸くあけてパチパチ目をまたたいた。「ペン公、本当にそう思うかい」
「本当に思う
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