まった。大切な証拠物件を何もかもみな持っていかれた。うむ」
と課長はようやく一大事に気がついたが、もうどうしようもなかった。
幽霊の賭は、遂に課長の負となり、蜂矢探偵が勝ったわけである。その蜂矢探偵の姿はいつの間にかこの部屋から消え失せていた。
大金庫やーい
「おい、何をしとる。早く金庫をとりもどさんか」
田山課長は、室内をあっちへ走りこっちへ走り、両手をうちふってわめきたてる。
「ところが、とりもどしたいにも、大金庫はどこへいったか分らんのです」
「そこの壁の中へ、すうっと入っていったがねえ。幽霊が、こんな手つきをして引っぱっていったが……」
「ばかなッ」課長は怒りにもえて課員をどなりつけた。
「そんなばかばかしいことがあってたまるか、大金庫は硬くて大きいんだぞ。それが壁の中へ入るなんて、そんなことは考えられん」
「いや、課長、たしかにすっと壁の中へ入っていったです。私はそれを追いかけていって、このとおり壁で鼻をいやというほどつぶしてしまいました」
金庫番の山形は、鼻血をだして赤く腫《は》れあがった自分の鼻を指した。
「そんなことはない。君たちは、そろいもそろって眼
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