る文章がいかに難解であろうと、頁をめくっているうちにはたまには課長に分る文句の一つや二つはあってもよさそうなものだと思ったので……。
その課長の労は、ついにむくいられたといっていいであろう。というわけは、彼はその研究ノートの頁と頁との間にはさまっている、別冊の黄表紙のパンフレットを見つけたからである。そのパンフレットの表紙には、めずらしく日本語で表題が書いてあった。それは『消身術に於《お》ける復元の研究文献抄』と読まれた。
「ふうん――」
課長はうなって、その表題に見入った。消身術に於ける復元――というのは何だろう。消身術とは身体を消して見えなくする術の事ではなかろうか。それは一種の忍術だ。妖術《ようじゅつ》である。こんなパンフレットを秘蔵しているところから考えると、木見雪子はそんな妖術の研究にふけったあげく、姿を現わしたり、隠したりしてあのふざけた幽霊さわぎをひきおこしたものではあるまいか。課長の眼はそのパンフレットの各頁の上を走りだした。
文献の内容は、消身術に関するものではなくて、いったん人間が消身術をおこなってから後、もとのように人間が姿をあらわすにはどうすればいいか――
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