こうして一週間ばかりの日がたった。
大胆な賭事《かけごと》
「やあ、課長さん」
きちんとした身なりの長身の紳士が、のっそりと田山課長の机の前に立った。
課長は何か書類を見ていたが、呼びかけられて顔をあげると、見る見る顔が朱盆《しゅぼん》のようにまっ赤になった。
「こんなところへ君が入ってきては困るね。おい本郷《ほんごう》、松倉《まつくら》、いったい何のために戸口をかためているのか」
課長は部下を叱《しか》りつけた。
「いや、僕は総監室からこっちへきたものですからね、貴官の部下には失策はないのですよ」
「総監だって誰だって、君をのこのこ、この部屋へ入らせることはできない。さあ、あっちの応接室へきたまえ」
雲行《くもゆき》は、はじめっから険悪だったが、応接室へ入ると同時にいっそう険悪さを加えた。
「なぜ君は、早く出頭しなかったのかね。その間に都下の新聞はこぞって、あのとおり幽霊の説、幽霊の研究、幽霊の事件の欄までできて騒いでいる。それにあおられて都民たちがすっかり幽霊病患者になっちまった。それについての都民からの投書が毎日机の上に山をなしている。みんな君のおかげだよ。
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