い。先生が、先生が……」
 川北先生はうわごとをつづけた。
「これは駄目じゃね。ねえ黒川君」
「重態ですな。注射と滋養|浣腸《かんちょう》をやってみましょう。明日の朝までに勝負がつくでしょうな」
「どっちだい、君の見込みは……」
 課長の問に対して黒川医師は口でこたえず、首を左右へふってみせた。
「どうです。課長さん。その道夫君というのをすぐここへ呼んでやったらどうでしょうかね」
「なに、道夫を呼ぶ」
 課長は気色のわるそうな顔をしたが、眼を転じて部下の一人へ眼配《めくば》せした。

   一週間

 川北先生の生死が賭《か》けられたその翌朝となった。
 先生はやっぱり苦しそうな呼吸をつづけていた。だが先生の心臓はとまらなかった。
「黒川君。あの川北は危機をとおりぬけたのかね」
 前夜から、川北先生と共に農業会で一夜を送った田山課長が黒川警察医にたずねた。
「これならすぐ死ぬようなことはありますまい」
 と、警察医は川北先生の脈をとりつづけながらこたえた。
「正気に戻るのはいつのことかね」
「さあ、それは全く不明です。もっと経過をみませんことには何ともいえませんな」
「ふうん」課長は不
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