とつぜん川北先生がうわごとをいった。目をつぶっている。青い顔には玉のような汗がうき、長い頭髪がべっとりぬれて眉《まゆ》の方までのびている。黒川医師は目を大きくむくと川北先生の眼をみた。
「かべか。かべがどうしたというんだ」
 課長と課員が、川北先生の枕頭をぐるっと囲んだ。川北先生の唇《くちびる》がぴくぴくとふるえるだけでもう声はでなかった。
「この病人はうわごとをさかんにいうのかね。ねえ君たち」
 と課長は、村の青年にきいた。
「は。ときどきいいます」
「蜂矢さんが手帳に書きとめて居られましたです。蜂矢さんをお呼びしましょうか」
「いや、よろしい」
 課長は首をかたくしていった。
「……流れる、流れる、流れる」
 又もや川北先生がうわごとを始めた。
「うっ、苦しいとめてくれ、誰かとめてくれ。黄いろいスープのような……」
 声はしゃがれて、あとは紫にそまった唇だけがわななく。
「黄いろいスープがどうしたんだ。これ川北君」
 課長が先生の方へかがみこんで、先生の左手をとって振った。その手は生きている人とは思われないほど冷たかった。
「……道夫君、道夫君、……あははは、君は心配せんでよろし
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