るのであった。どんな本? 道夫は好奇心をつのらせて、その本の頁《ページ》の上を見た。すると、それは文字を印刷した本ではなく、ペンでもってこまかい外国の文字が、ぎっちり書きこんであった。それと同時に道夫は、はっと気がついた。
(ああ、あれは雪子姉さんの研究ノートじゃないんだろうか?)
 もしそうだとしたら、問題の研究ノートを所有しているこの怪紳士は一体何物であろうか。フォークもナイフも、いつの間にか道夫の手にしっかり握られたまま動かなくなっていた。

   奇妙な実験

「ははは、びっくりしているね、道夫君。僕が木見さんのお嬢さんの研究ノートをひろげて見ているものだから……」
 怪紳士は、そういってにやりと笑った。道夫は声もでなかった。背中がぞっと寒くなった。
「元気になったところで、われわれの仕事を急ごうね」
「……」
「道夫君。この際つまらんことは一切考えたり、迷ったりしないことだ。われわれは一直線に木見学士を救いだすことに進まねばならない。君は僕のさしずするとおりにやってくれるね」
「はあ、でも……」
「でもそれがよくない。疑ったり迷ったりしていると、もう間に合わないかもしれない」
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