ト八冊をうばい窓から逃げだした人物こそ、この怪老人に違いないという結論になるはずだった。
そんなことを考えながら、道夫は堤《どて》の上をぶらぶら歩いていた。そのとき彼が、ふと堤の下から一条の煙があがっているのに目をとめ、その煙をつたわって何気なく、その煙の源《みなもと》を見ると、一人の男が焚火《たきび》をして、何か物を煮ているのだった。道夫は、いきなり堤下へ飛び下りた。
「おじいさん。しばらくだったね」
相手は、ぎょっとして道夫の顔を仰《あお》いだ。道夫はそのとき老人が髯面《ひげづら》に色眼鏡をかけているのを見て取った。だがその色眼鏡は、かねて見覚えのあるものとは違い、枠の細いものであることに気がついた。さてはと道夫の胸はおどった。
老人はつと立って、例の不恰好《ぶかっこう》な厚着をした身体をぶるんとふるわせると、物もいわずに逃げだした。
「話があるんだ。待ちなさい。おじいさん」
道夫は後から追いかけた。が老人の足は意外に速く、道夫の方は堤の雑草に足を取られそうで、気が気ではなかった。そのうちに道夫はあっと声をあげた。思いがけなく穴ぼこに落ちこんだのである。その穴は意外に深く、
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