。係官は相当の捜査をした上で、どうも分らないと事件をなげだしたわけだろうが、まあ私の感じでは、この事件はかなりの難事件だと思うね。よほどの名探偵が登場して、徹底的に事件を調べないかぎり、事件の謎はとけないだろうという気がする」
 そういって先生は、深い溜息《ためいき》をついた。
「そうですか。そういう名探偵がいるでしょうか。うまくたのめましょうか。そして雪子姉さん――いや木見学士をうまく取りもどして下さるでしょうか」
「さあ、そのことだがね。……心当りの人がひとりないでもないのだが、あいにく不在なんだ。よく旅行にでかける人でね」
「じゃあ今お頼みできないわけですね。困ったなあ」
「まあ三田君。そう悲観しないでもいいよ」
 先生はなぐさめ顔にいった。
「ですが先生、僕のような力のない者がひとりで事件の解決に当って見ても、とても駄目だと分ったんですからね」
「ああ、それはそうだが……」
 川北先生はすこしためらって見えたが、やがて道夫の肩に手をおいて、
「よし、三田君、じゃあ私ができるだけ君に力をかそうじゃないか。もちろん二人だけの力ではだめだと思うが、君ひとりよりもましだし、それに私は君
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