昨夜、研究室の入口の扉は、しめてありましたか」
雪子の母親は、なぜそんなことを聞くのかといぶかりながら、答えてくれた。
「あの入口の扉は、いつもちゃんとしめてありますの。なんだか気味がわるくてね」
「はあ、そうですか。そして、鍵はどうでしょう。昨夜研究室の扉の鍵はかけてありましたか。どうなんですか」
「鍵? ええ鍵はちゃんとかけてありましたよ。まあ、なぜそんなことをお聞きなさるの」
「ええ、それは……それはちょっと考えてみたいことがあったからです」
道夫は、そこで話を切って、外へでた。
不思議だ、不思議だ。研究室の扉に錠が下りていたのなら、外からあの部屋へは誰も入れないはずだ。すると昨夜見たあの女は、いったいどこからあの部屋へ入りこんだのであろうか。いよいよわけがわからなくなった。
川北《かわきた》先生
「おい三田君。君は何か心配事でもあるの。近頃みょうにふさぎこんでいるじゃないか」
学校でのお昼休みの時間、運動場のすみの木柵《きさく》によりかかって、ぼんやり考えこんでいる、道夫の肩を、そういってたたいた者があった。
「あ、川北先生……」、
主任の川北先生が、眼鏡の
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