るのだった。
 そのくせ、眼で見ると、雪子の手は、手首から腕へ、腕から肩へとちゃんと続いていたのである。さわってみて、手首しかない。眼で見ると手首から上はちゃんとしている。なんという気味のわるいことであろう。気味わるさは、その切りはなされたような手首が、道夫の両手の中でもぞもぞ動きだしたときには絶頂に達した。道夫はとうとう本当に気絶してしまった。
 それからどのくらいの時間がたったか分らないが、道夫が気がついたときには、彼は机にうつ伏せになり、そして雪子の幽霊が彼のまわりをうろうろ走りまわっているのを発見した。
 道夫が気がついたのを見た雪子の幽霊は、たいへんよろこんだ。
「道夫さん。しっかりしてよ。そんなに気が弱くてはだめね」
「だって、仕方がないや」
「幽霊なんかこわがっていてはだめよ、何でもないんだから……」
「だって……」
「さあ、これをごらんなさい」
 雪子は道夫の前へ一枚の紙を持ってきてその上に鉛筆で図をひいた。
「これは平面、すなわち二次元の世界よ。それはしずかな水の表面だと仮定しましょう。今その上からお芋《いも》をおとしたとしましょう。お芋はもちろん三次元の物体です。す
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