「ま、そう怒ってはいけない。君は誤解しているようだ」
 と貞雄は恐れ気もなく、傍に寄り添って来ながら、
「僕は誓う。また君自身も知っているだろうが、僕は絶対に君と性的交渉を持ったことはないのだ。ね、そうだろう。――だから怒ることはないじゃないか」
 そういわれると、妾にもその忌《いま》わしいことの覚えはなかったが、それにしても……。
「じゃあ、それが本当なら、なぜ妾は貴方の胤《たね》を宿したのです。誰が訛《だま》されるもんですか。嘘つき!」
「君と関係を持たなくても妊娠させることは出来る。――君は覚えているだろうが、この前僕が医師として君の身体を検べたときに、簡単な器械で君に人工姙娠をしといたのだ。造作のないことだ」
「じゃあ、忌わしい関係はなかったんですね」
 と妾は稍《やや》安堵《あんど》はしたものの重ねて詰問をした。
「でもなんの目的で、妾を身籠らせたんです!」
「それは君、君の頼みを果しただけのことだよ。君は『三人の双生児』のことを知りたがって、どんな手段でもいい、と云ったではないか、実を云えば、先刻話をした結論の中には欠陥があったのだ。それは私の父と君の母親とが果して関係
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