》う様子もなく、真面目に聞いて呉れたのだった。だから妾はすぐさまそのトランクを開いてみる決心をして、貞雄を案内して黴臭《かびくさ》い土蔵の中に入っていったのであった。
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貞雄の云ったことは正に図星《ずぼし》だった。
妾たちはトランクを一つ一つ開いてゆくうちに、その一つの中に、あの夜真一が水を飲むに使った大きいコップを発見した。それは狼狽《ろうばい》のあまり妾が他の品物と一緒に抛りこんでしまったものに違いなかった。
貞雄は、そのコップを取り上げて、明りの方に透かしてみたり、ちょっと臭を嗅いでみたりしていたが、やがて妾の方を向き、
「珠枝さん、ハッキリは分らないが、どうやらこれは砒素《ひそ》が入っていたような形跡がある。無水亜砒酸《むすいあひさん》に或る処理を施すと、まず水のようなものに溶けた形になるが、こいつは猛毒をもっている。普通なら飲もうとしても気がつく筈だが、当人が酒に酔っているかなにかすれば、気がつかないで飲んでしまうだろう。砒素は簡単に検出できるから、あとで検べてみよう。しかしまず間違いないと思うネ」
「まア、水瓶の中に砒素が入っていたの、まア恐ろしい
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