え二卵性の双生児としても、それはあまりにも似合わしからぬところであった。すると真一は境遇の上では妾の同胞に相当していながら、身体の上の印からはどうしても他人|染《じ》みていた。この不可解な問題は父が書きのこした「呪ワレテアレ、三人ノ双生児!」の謎をときさえすればすべてが氷解することと思う。どうしても妾は、静枝の云うように、彼女と産褥《さんじょく》にある母とを加えて、父が三人の双生児と洒落《しゃれ》らしいことを云ったなどとは考えない。
 話によると、体の一部が接《つな》がった双生児を、そこのところから切り離して、全く独り立ちの二人の人間にした手術の話もあることだから、これはひょっとすると、妾の身体の一部に、そんな恐ろしい切開の痕があるのではないかと、今までに考えてみたこともないような恐ろしい疑惑が浮び上って、それは嵐の前の旋風に乗った黒雲のように拡がってゆき、遂に妾は居ても立ってもいられない焦躁の念に包まれてしまった。誰がそんな恐ろしい疑惑をもって、自分の裸身の隅から隅まで検べてみた者があろうか。第一、自分ではどうしても十分に観察の出来ない身体の一部が有るではないかと思うと、妾の心臓は俄
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