静枝が蛇使いのお八重であるか、どうかと思って、それとなく、お八重の容貌などについて尋ねてみたが、聞いていた銀平は大きく肯き、
「そういえば、お前さんをどこかで見たような仁《じん》だと思っていたが、なるほどお前さんはお八重に似ているところがあるネ。お前さんはその姉さんか身内ででもあるのかい」
と云ってシゲシゲと妾の顔を見た。妾は真逆《まさか》そんなことがネと、軽く打消した。だが、静枝はお八重に違いない気がする。恐らく彼女は一座と縁を切るために、殊更《ことさら》自殺したらしく見せかけたものであろう。そこには智恵袋の速水女史が采配を振っただろうことが想像されるのであった。でも彼女の前身が分っていないのでは、どうにも仕方がなかった。疑うなれば、なにか別の手段によって、ハッキリした証拠を探すより外はなかった。ただ静枝が真一に恋をしていたということは初耳だった。一方真一は静枝を愛していたのだろうか。そう思うと、妾の全身はカッと熱くなってきた。
思い起してみると、真一が静枝の前身を告げたときも、どっちかというと静枝を軽蔑しているようであったから、これは真一が慕われる方であったとしても、慕う方では
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