かネ。海盤車娘もたくさんいるが、どの娘かネ」
「娘と名はついているが、本当は安宅真一という男なんですが……あの肩のところに傷跡の残っている……」
「ああ、真公のことかネ。あいつはついこの間まで居たが、とうとうずらかりやがった。あっしとしては、これんばかりの小さいときから手がけた惜しい玉だったが……貴女さんはなぜ真公のことを訊きなさるのかネ」
 そこで妾は、真一が頼ってきて遂に死んだ話をした後、始め真一が幼いときの身の上ばなしをしたが、何かほかに銀平老人が知っていることはないかと訊ねた。
「ああ、真公の生立《おいた》ちが知りたいというのだネ。あれは今からザット十五六年も前、四国の徳島で買った子だったがネ。当時はなんでも八つだといったネ。病身らしい子で、とても育つまいかとは思ったが、肩のところにある瘤《こぶ》が気に入って買ってしまったのさ」
「誰から買ったんですの」
「さあ、そいつは誰だったか覚えていないが、とにかく何処の国にもある人売稼業の男から買った」
「その親は誰なんでしょう」
「さあ、その親許《おやもと》だが」
 と老人は暫く考えていたが、「さあ、後に開演中の客席から大声をあげて飛
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