「それくらいの相似なら、どんな他人同志だって似ているわよ。とにかくあんたは、あたしの探している双生児の一人じゃないと思うわ」
「そういわないで、僕を助けて下さい」
と真一は両手で顔を蔽《おお》い、ワッと泣きだした。
「ぼ、僕はいま病気なんです。それで働けないのです。僕はもう三日も、碌《ろく》に食事をしないでいます。ますます身体は悪くなってきます。お願いですから、助けて下さい」
こんなことになってしまって、妾はたいへん当惑《とうわく》した。これはなんとかして、早く帰ってもらわないといけないと思った。それには彼が居たたまれないように、もっと弱点をつくことにあると思った。
「あたしは、本当のはらから[#「はらから」に傍点]を見つけたくてあの広告を出したのよ。あんたは知らないでしょうけれど、あたしは双生児でも、三人一組なのよ。つまり三人の双生児であると、死んだ父が日記に書き残してあるわ。この点からいってもあんたの持ってきた話の中には三人の双生児という重大な謎を解くに足るものがすこしも入っていないじゃありませんか。だからたいへんお気の毒だけれど、あたしはあんたを兄とも弟とも認めることができな
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