だ」
「ふしぎだ。とにかくそばへ行ってみよう」
「おいおい、待ちたまえ。あれは危険なものじゃないか」
「そういえば、昔の写真に出ている機雷《きらい》みたいな形をしていますわね」
「ふん、機雷に似たところもあるけれど、機雷は海の中にあるもので、こんな山の中にあるはずがない」
 四人の登山者は、それから谷間をつたわって、下手へおりていった。みんな何となくおそろしいが、しかし自分たちで発見したものだから、ぜひその正体をたしかめたかった。
 ようやくそばへ近よることが出来た。
 沢のまん中に、直径《ちょっけい》三メートルもあると思われる金属球が、でんと腰をすえていた。表面はぴかぴかに光沢《こうたく》を放っている。十字にバンドがしてある。アイ・ボルトが何本かうちこんである。一同はそのまわりをまわってみた。
「や、字が書いてある」
 たしかに字が書いてある。書いてあるというより、字を酸水素焔《さんすいそえん》かなんかで焼きつけてあるといった方が正しいであろう。
 ×取扱注意。扉Aを開け×
 それだけのことが書いてある。
 はて、この球は一たい何であろう。


   冷凍人間《れいとうにんげん》


 四人の登山者の好奇心《こうきしん》は、いやがうえにももえあがった。
 もう登山どころではない。このふしぎな金属球の中をのぞいてみないと、承知ができなかった。
「とにかくこの球は、万年雪がとけて、その下から出て来たものだよ。もっと上にあったのが、ころがりだして、ここまで来て停《とま》ったんだと思う」
「火星からなげてよこしたものじゃないか。開けると、中から火星人の手紙かなんか入っているんじゃない?」
「火星からじゃないよ。だってこのとおり×取扱注意、扉Aを開け×と、日本文字で書いてあるんだから、これは日本でこしらえたものにちがいない」
「早く、その扉Aというのをあけてみた方がよかないでしょうか」
「そうだ。それがいい。そうしよう」
 扉Aというのはどこかと、球の表面《ひょうめん》をさがしまわった結果、後ろの方に半ば土にうずもれて×扉A×と書いてあるものが見つかった。土を掘ってみると、扉Aはまるいふたのようなものであった。それにはハンドルがついていて、左へ二十回ねじるように示してあったので、そのとおりにした。
 するとそのふたみたいなものが開いた。金属板の上には、やはり薄彫《うすぼ》り
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