。
見える、見える、
たしかに月人だ。トロイ谷で見かけたとおりの月人の姿をしたものが、第三門口を、拳《こぶし》でがんがん叩いている。カブト虫みたいな気味のわるい身体。上がとんがったのっぺらぼうの頭。その上に黄いろく光って見えるキツネのようにつりあがった二つの目。たしかに月人だ。
「早く撃ったがいい。艇をこわして、中へはいってこられたらたいへんだ」
「そうだ。やっつけた方がいい。トロイ谷で、きゃつらは勝ったように思っているのだ。こっぴどくやっつけてやるがいい。」
隊員たちは、トロイ谷で月人からひどい目にあわされたので、今こそ月人をたおして、地球人の威力《いりょく》を見せるときだと、いきまいている。
マルモ隊長の耳にも、隊員たちの声がはいった。しかし、彼はおちついたおだやかな人物であったから、一人の月人をここで倒すよりも、もっと外にいい方法はないものかと、もう一度考えた。
そのときだった。正吉が隊長の腕に飛びついたのは。
「隊長さん。あの月人は、ぼくのおじの毛利博士だと思います。だから、手荒なことはしないようにして下さい。」
正吉のことばは、隊長をおどろかすのに十分であった。
前へ
次へ
全146ページ中92ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング