頭がぐしゃりとやられたんでは……」
「ひとりで歩く場合には鋼鉄《こうてつ》のかぶとをかぶって歩く。中くらいの隕石ではあたってもこのかぶとでふせぐことができる」
「ああ、そんなものも用意してあるんですね」
「そうだ。それに、本艇には隕石を警戒している隕石探知器というものがあって、隕石が降ってくると、千キロメートルの彼方で早くもそれを感知して電波で警報を発する。この警報はかぶとをかぶって歩いている連中にも受信できるようになっている。だからこの警報を聞いたら、大急ぎで、反対の側の山かげや地隙《ちげき》にかくれるとか、または本艇へかけもどって来れば、一そう安全だ。だから君たち、心配はいらないんだよ」
カコ技師の話は、はじめて月世界へ行く連中を安心させるいい話だった。
だが、月世界と地球とは、いろいろなところにおいて様子がたいへんかわっているので、まだまだ面くらうことがたくさんあるはずであった。
やがていよいよ、月世界に着陸する時間が来た。
艇は、いま向きをかえ、月面と平行にとんでいる。雲の海附近にかなり広い沙漠帯《さばくたい》があってそこが着陸に便利だと知れていた。
その着陸コースに
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