んだよ」
「いいえ、ぼくはだんぜん上陸します。でないと月世界まで来た意味がありませんもの」
ついに着陸
偵察ロケットはだんだん高度を低くし、月面に近づいていった。そしてていねいにいく度もいく度も同じ地域の上空をとんだ。
「大丈夫のようです。別にかわったものを見かけませんから」
そういって艇長の方を向いたのは、観測団長のカンノ博士だった。
「うむ。まず、大丈夫らしいね。では着陸の用意をさせよう」
艇長はマイクを手にとりあげて、その用意方《よういかた》を全艇へつたえた。
「さあ、忙しくなったぞ」
と、カンノ博士は正吉にしばらくの別れを告げて、操縦室から去った。
着陸の用意は、二十四時間かかった。
いまはカコ技師も、はればれとした顔つきになって、喫煙室《きつえんしつ》へ来て、煙草をうまそうに吸いながら、だれかれと話しあっている。
「こんどは装甲車《そうこうしゃ》を五台出動させることができる。だから上陸班は十分に活動ができると思う」
「装甲車というと、どんなものですか」
「一種の自動車さ。そしてガソリンではなく原子力エンジンで動く。それから外側が厚さ十センチの鋼板で全
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