なん》の海という名のついた海のあとさ。ほら、だんだん大きな噴火口が下の方からあらわれてくる……」
大きな噴火口があらわれては、消える。
画面が急にかわった。映写幕の右の方に月の面《めん》が大きく弧線《こせん》をえがいてうつった。ここにはまたもっと大きい噴火口が集っている。
「さっきのと、ちがう別の偵察ロケットのテレビジョンに切りかえられたんだ。今うつっているのは月の南東部だ。まん中へんに見える細長い噴火口がシッカルトだ。直径が二百五十キロもある。壁の一番高いところは二千七百メートル。大きいだろう」
「すごいですね」
白く光る月面を見ていると、なんだか身体がこまかくふるえてくるようだ。
「そのずっと左の方に有名なティヒヨ山が見える。高さは五千七百メートル。四方八方へ輝条《きじょう》というものが走っているのが見える」
「ぼくたちは、どこへ着陸するのですか」
「予定では、『雲の海』のあたりだ。そうだ、雲の海は、いま画面のまん中あたりの下の方にある。つまりティヒヨ山から北東の方向へ行ったところにある」
「すごいですね」
「こわくなりゃしない? こわければ上陸しないで、本艇に残っていていい
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