らそれがわれわれの目にかわって月世界の方々を見る。それが電波に乗って本艇へとどく。本艇ではそのテレビ電波を受信して、映写幕にうつし出す。つまりこれだけのものがあると、本艇の目がうんと前方へ伸びたと同じことになる。たいへんちょうほうだ」
「なぜ、そんなことをするんですか」
「これは、もし前方に危険があったときは、偵察ロケットが感じて知らせてよこす。本艇はさっそく逃げることができる。偵察ロケットの方は破壊されてもかまわない。それには人間が乗っていないのだからね」
「音も聞けるわけですね。偵察ロケットにマイクをのせておけばいいわけだから」
「技術上は、そういうこともできる。しかしこの場合、音をきく仕掛はいらない」
「なぜですか」
「だって、月世界には空気がない。空気がなければ、音はないわけだ」
「ああ、そうでしたね」


   月の噴火口《ふんかこう》


 偵察ロケットは、三台も発射された。
 それは小型のロケットで、砲弾のような形をしていた。
 あと十二時間すると、月の上空へ達するそうである。
 この光景はテレビジョンにおさめられ、地球へ向けて放送された。
「月世界って、そんなに危険なと
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