感じにかわっていった。
「キンちゃん、あれから後、いくど気絶したの」
 正吉がそういって料理番のキンちゃんをからかうと、キンちゃんは顔をまっ赤《か》にして、
「あのとき一ぺんこっきりだよ。そんなにたびたびやって、たまるものか。それよりか、今日の夕食にはすごいごちそうが出るよ」
「すごいごちそうというと、お皿の上に地球がのっかっているといった料理かね」
「また地球で、わしをからかうんだね。地球のことはもう棚《たな》にあげときましょう。さて今夜の料理にはね、牡牛《おうし》の舌の塩づけに、サラダ菜《な》をそえて、その上に……」
「雨ガエルでも、とまらせておくんだね」
 正吉は、じょうだんをいって、食堂から出ていった。
 廊下《ろうか》の曲《まが》り門《かど》のところで、正吉は大人の人に、はちあわせをした。誰かと思えば、それは藍《あい》色の仕事服を着て、青写真を小脇に抱えているカコ技師であった。
「あ、あぶない。正吉君、なにを急いでいるのかね」
「いま、食堂ですてきに甘いものをたべて来たので、元気があふれているんです。ですからこれから艇長のところへ行って探検の話でも聞かせてもらって来るつもりな
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